聞いて欲しい人が、ひとりおるんです。
政と聖(まつりごと)を描く、第174回芥川賞受賞作。
畠山丑雄さんの『叫び』は、2026年1月14日に刊行されました。
大阪の茨木、満州、そして2025年大阪万博を舞台に、銅鐸を作り、歴史を学び、恋をした男の小説です。
早野ひかるは「先生」に打ちのめされ、銅鐸と土地の来歴を学び始めます。
ここではかつて罌粟栽培と阿片製造が盛んで、満州に渡って「陛下への花束」を編み、紀元2600年記念万博を楽しみにしていた青年がいました。
いつしか昭和と令和はつながり、封印されていた声が溢れ出す。
幻と現実の二つの万博を貫く、響きに満ちた野心作。
あらすじなど
主人公は、早野ひかる。
37歳、独身の地方公務員。
大阪府茨木市に住んでいます。
彼女に振られ、自堕落な生活を送っていた早野。
自暴自棄になっている時、ふと銅鐸作りの「先生」に出会います。
不思議な男です。
早野は、「先生」とあおぐようになります。
先生の指導の一環で、早野は郷土史を学び始めました。
公共施設で鋳造体験会の助手を務めるうちに、交際相手ができました。
そして、早野は銅鐸を作り、歴史を学び、恋をしていきます。
茨木市の郷土史を学ぶ中で、早野はある歴史を知ります。
戦時中、この地でケシ栽培が盛んだったこと。
かつて罌粟栽培と阿片製造が盛んだった茨木。
そこに、満州に渡って「陛下への花束」を編んだ青年がいました。
1938年、川又青年は星空を夢見て大陸へと渡りました。
紀元2600年記念万博を楽しみにしていた青年です。
約90年後、彼の故郷・大阪の茨木で「先生」と出会った早野ひかる。
かつての「紀元2600年記念万博」を夢見た青年の記憶。
そして、現代の「2025年大阪・関西万博」を控えた日常。
いつしか昭和と令和はつながり、封印されていた声が溢れ出します。
大阪と大陸で響き合う夢とロマン。
過去の叫びを現代に再生し続けるべきなのか。
それはもはや「推し」への妄想に近い献身であり、自身のアイデンティティが歴史に乗っ取られていくような、静かな狂気とサスペンスを孕んでいます。
戦争や天皇、万博などをモチーフに、昭和と令和がつながっていきます。
国家の欲望や天皇制をも巻き込んで、驚くべき結末へ――。
畠山丑雄さんについて
畠山丑雄(はたけやま・うしお)さんは、1992年大阪府吹田市生まれ。
京都大学文学部を卒業されています。
現在は大阪府茨木市在住。
地方公務員の傍ら、小説を執筆されています。
2015年、京都大学在学中に「地の底の記憶」で第52回文藝賞を受賞し、デビュー。
鮮烈なデビューを果たしました。
2025年、『改元』が第38回三島由紀夫賞候補となり、注目を集めました。
そして2026年、「叫び」で第174回芥川龍之介賞を受賞されました。
作品:
- 『地の底の記憶』(河出書房新社、2015年)文藝賞受賞作
- 『改元』(石原書房、2025年)三島由紀夫賞候補作
- 『叫び』(新潮社、2026年)芥川賞受賞作
畠山さんの作品に共通しているのは、声高な主張ではなく、沈黙のなかに滲む情です。
登場人物たちは、何かを失い、あるいはうまく言葉にできない違和感を抱えながら、日常を生きています。
その姿が、とても現実的です。
派手さはないのに、読み終えたあと、しばらく心に残る。
それが、畠山丑雄という作家の大きな特徴だと言われています。
『改元』では、時代が切り替わる瞬間に生まれる、個人のズレや戸惑いが描かれました。
元号が変わるという出来事は、社会にとっては大きな節目ですが、個人の感情は必ずしも追いつきません。
その取り残される感覚が、とても静かな筆致で描かれています。
現実的な地方行政の描写に、儀礼的で象徴性の強い場面が折り重なるマジック・リアリズム的な筆致。
個人の人生がいつの間にか「歴史」や「物語」の一部へと組み込まれていく過程が浮かび上がります。
そして本作『叫び』は、実に二年半ぶりに文芸誌に発表された作品です。
畠山さん自身の出身地でもある大阪を舞台にしているため、土地勘を生かしたリアルな描写や、関西特有の空気感にも期待が高まりました。
そして、その期待に応える形で、芥川賞受賞となりました。
本作の読みどころ
「戦後日本」を問う圧巻の現代小説
「戦後日本を問う圧巻の現代小説の誕生だ」と賞賛された本作。
大阪府茨木市を舞台に、現代と過去、そして大陸の記憶が交錯する圧倒的なスケールの物語です。
昭和と令和、茨木と満州、幻と現実。
二つの時間、二つの場所が交錯し、響き合います。
封印されていた「叫び」
茨木の地に封印されていた歴史。
戦時中の罌粟栽培と阿片製造。
満州に渡った青年たち。
紀元2600年記念万博を楽しみにしていた人々。
その「埋もれた叫び」が、現代に蘇ります。
土地の記憶を呼び覚ます物語
私たちの足元にある土地の記憶を呼び覚まし、今を生きる意味を問い直させてくれる物語です。
茨木の歴史と万博がこんな形で繋がるとは――。
読者からは、驚きの声が寄せられています。
主人公の「負い目」と「空虚感」
人生に行き詰まった一人の若者が、ある出会いをきっかけに土地の歴史に深くのめり込んでいく姿。
主人公が抱える「負い目」や「空虚感」は、現代を生きる多くの若者が抱く感情ともリンクしており、単なる歴史小説に留まらない普遍的な魅力を持っています。
静かな狂気とサスペンス
過去の叫びを現代に再生し続けるべきなのか。
読む者の倫理を揺さぶる一冊です。
それはもはや「推し」への妄想に近い献身であり、自身のアイデンティティが歴史に乗っ取られていくような、静かな狂気とサスペンスを孕んでいます。
圧倒的な筆力
あらすじから受ける「硬い」印象とは裏腹に、物語に引き込まれるスピード感が凄まじいのが特徴です。
「先生」との対話を通じて、自分自身も浄化されていくような感覚になった。
過去の「叫び」が聞こえてくるような、震える読書体験だった。
読者からは、そんな声が寄せられています。
こんな人に特に読んでほしい
現代文学に興味がある方
芥川賞受賞作として、現代文学の最前線を感じられる作品です。
「戦後日本を問う圧巻の現代小説の誕生だ」と高く評価されています。
歴史と現代の接続に興味がある方
昭和と令和がどのようにつながっているのか。
過去の記憶が現代にどのような影響を与えているのか。
そうしたテーマに興味がある方にお勧めです。
地方の歴史を掘り下げた作品が好きな方
大阪府茨木市という具体的な土地を舞台に、その土地の歴史を丁寧に掘り下げた作品です。
舞台となった大阪府茨木市には実際に銅鐸の博物館などもあり、聖地巡礼を楽しむ読者も増えていると言われています。
社会派の作品を求める方
戦争、天皇制、万博、阿片製造。
重いテーマを扱いながらも、個人の物語として読める作品です。
静かで深い読書体験を求める方
派手さはないのに、読み終えたあと、しばらく心に残る。
声高な主張ではなく、沈黙のなかに滲む情。
そうした静かで深い読書体験を求める方にお勧めです。
注意点など
重いテーマを扱っています
戦争、阿片製造、天皇制など、重いテーマを扱っています。
軽い気持ちで読める作品ではありません。
「硬い」印象を受けるかもしれません
あらすじだけ見ると、歴史小説として「硬い」印象を受けるかもしれません。
しかし、実際に読み始めると、物語に引き込まれるスピード感があります。
主人公の描写について
主人公の行動や思考について、読者によって評価が分かれる可能性があります。
「キモい」という声もあれば、「リアル」という声もあります。
おわりに:封印されていた「叫び」を解き放つ物語
『叫び』は、畠山丑雄さんが2026年1月14日に刊行した小説です。
第174回芥川龍之介賞受賞作。
聞いて欲しい人が、ひとりおるんです。
政と聖(まつりごと)を描く、圧巻の現代小説。
早野ひかるは「先生」に打ちのめされ、銅鐸と土地の来歴を学び始めます。
大阪府茨木市。
ここではかつて罌粟栽培と阿片製造が盛んでした。
満州に渡って「陛下への花束」を編み、紀元2600年記念万博を楽しみにしていた青年がいました。
1938年、川又青年は星空を夢見て大陸へと渡りました。
約90年後、彼の故郷・大阪の茨木で「先生」と出会った早野ひかる。
いつしか昭和と令和はつながり、封印されていた声が溢れ出します。
大阪と大陸で響き合う夢とロマン。
幻と現実の二つの万博を貫く、響きに満ちた野心作。
1992年大阪府吹田市生まれの畠山丑雄さん。
京都大学在学中の2015年に「地の底の記憶」で文藝賞を受賞してデビュー。
地方公務員の傍ら小説を執筆し、2025年の『改元』は三島由紀夫賞候補となりました。
そして、実に二年半ぶりに文芸誌に発表した本作『叫び』で、芥川賞を受賞されました。
声高な主張ではなく、沈黙のなかに滲む情。
登場人物たちは、何かを失い、あるいはうまく言葉にできない違和感を抱えながら、日常を生きています。
派手さはないのに、読み終えたあと、しばらく心に残る。
それが、畠山丑雄という作家の大きな特徴です。
現実的な地方行政の描写に、儀礼的で象徴性の強い場面が折り重なるマジック・リアリズム的な筆致。
個人の人生がいつの間にか「歴史」や「物語」の一部へと組み込まれていく過程が浮かび上がります。
私たちの足元にある土地の記憶を呼び覚まし、今を生きる意味を問い直させてくれる物語。
茨木の歴史と万博がこんな形で繋がるとは――。
過去の「叫び」が聞こえてくるような、震える読書体験。
過去の叫びを現代に再生し続けるべきなのか。
読む者の倫理を揺さぶる一冊。
「戦後日本を問う圧巻の現代小説の誕生だ」と高く評価された、第174回芥川賞受賞作を、ぜひお読みください。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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