言葉が変わると、物語が変わる——プロ小説家が贈る語彙のすべて
「悲しい」「嬉しい」「美しい」——そんな言葉で書いた文章が、なぜか薄く感じてしまう。
そういった悩みを抱えるクリエイターは多いといえます。
感情はたしかにある。
伝えたいことも頭の中にある。
それなのに、文章にしてみると何かが足りない、そんな経験はよくあることでしょう。
『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』は、そのような語彙の壁を乗り越えるための一冊として、多くのクリエイターから注目を集めている実用書です。
著者は、現役プロ小説家でありコピーライターでもある秀島迅さん。
表現のプロが、実際の創作現場で使える語彙を「感情」「身体的特徴」「声」「感触」「情景」「色」という6つのカテゴリーに分けて丁寧に解説しています。
小説家・ライトノベル作家・漫画家・シナリオライター・SNSクリエイターまで、あらゆる書き手の手元に置きたい一冊といえるでしょう。
この本で「何が」学べるのか
本書の構成は、シンプルかつ実践的です。
テーマとなるのは「語彙のバリエーション」と「その正しい使い方」。
たとえば「悲しい」という感情ひとつをとっても、本書では身体反応の表現が16種類、心理反応の表現が16種類、計32のバリエーションが紹介されています。
「泣く」だけではない、悲しみの細かな表れ方——。
そこにこそ、文章の解像度が宿るといえるでしょう。
同じ「悲しみ」を描くとしても、喉が詰まる感覚なのか、胸の奥が締めつけられる感覚なのか、表現によって読者が受け取る情景はまるで異なるものになります。
本書はそういった「一歩踏み込んだ言葉の選び方」を、具体的な語彙の例とともに示しています。
6つのカテゴリーはそれぞれ独立しているため、自分が苦手としている分野から読み始めることができます。
「感情表現は得意だけど、情景描写がどうも弱い」という書き手も、必要な章だけを集中して読むことができるつくりになっています。
また、巻末には「語彙力テスト」と称した実践問題が収録されています。
映像や状況を文章化する練習問題であり、ただ語彙を眺めるだけでなく、実際に使って身につけることができる工夫がなされています。
知識として知っているだけの語彙と、自分の表現として使いこなせる語彙は、まったく別物です。
その差を埋めるための設計が、随所に見られる一冊といえます。
著者・秀島迅さんについて
秀島迅さんは、青山学院大学経済学部を卒業後、広告代理店や外資系IT企業での勤務を経て独立したという、珍しい経歴を持つ作家です。
コピーライターとしての側面も持ち、企業CMのシナリオライティングを月10本以上手がけるなど、商業の最前線で言葉を磨き続けてきた方でもあります。
2015年には、KADOKAWA主催の電撃小説大賞を経て『さよなら、君のいない海』で単行本デビューを果たしています。
電撃小説大賞は、応募総数が日本一ともいわれる文学賞であり、その門をくぐったデビューという経歴は、秀島さんの実力を示すものといえるでしょう。
その後も、講談社から『その一秒先を信じて シロの篇/アカの篇』を刊行しています。
確認できている著書については以上のとおりですが、そのほかの受賞歴や作品の詳細については、書籍の著者プロフィールや公式情報をご確認ください。
創作の世界と広告の世界、両方を知る秀島さんだからこそ書ける「実践に直結した語彙の解説」が、本書最大の魅力といっても過言ではないでしょう。
言葉を「知っている」ことと「使える」ことの違いを誰より知る著者が、語彙力という問題に真正面から向き合った一冊——それが本書といえます。
読みどころ
「なんとなく似た言葉」の違いが、初めてわかる
「悲しい」「切ない」「寂しい」——これらはどれも感情を表す言葉ですが、その意味合いは微妙に異なります。
しかし日常的な会話では、それらを厳密に使い分けることはほとんどありません。
文章表現において問題になるのは、まさにそこです。
本書では、よく似た語彙の差異を丁寧に解説しています。
どういう場面でどの言葉が最もふさわしいのか、そのニュアンスの違いが整理されているため、「なんとなく雰囲気で選んでいた言葉」を、意図を持って選べるようになっていくでしょう。
語彙は量だけでなく、使い分けの精度が重要です。
その精度を上げるための視点が、本書には豊富に詰まっています。
「あの言葉とこの言葉、どちらが正しいのだろう」という迷いが、読み進めるうちに少しずつ解消されていく感覚があるといえます。
6つのカテゴリーが、文章の「弱点」を明らかにする
「感情」「身体的特徴」「声」「感触」「情景」「色」——本書が設けた6つのカテゴリーは、文章表現の地図のようなものといえます。
自分が普段どのカテゴリーに頼りすぎているか、逆にどのカテゴリーの語彙が少ないかが、本書を読む中で見えてくるでしょう。
感情描写には慣れているが、色彩の描写に語彙が少ない——。
情景は豊かに書けるが、身体的特徴の描写が単調になりがち——。
そういった自分の文章の傾向や偏りに気づくことが、表現力を伸ばす大きな第一歩になるといえます。
6つのカテゴリーをそれぞれ意識しながら書くことで、文章全体の「厚み」が変わってくるでしょう。
特定のジャンルに偏らず、あらゆる描写に語彙のバリエーションを持てるようになることが、本書の目指す到達点のひとつといえます。
巻末「語彙力テスト」が、本物の実力に変える
本書には、読んで終わりではなく「実際に書いてみる」ための仕掛けが用意されています。
それが巻末の「語彙力テスト」です。
映像や状況を文章化する実践問題であり、本書で学んだ語彙を実際のアウトプットに活かす練習ができます。
語彙の知識は、頭の中に蓄積されているだけでは意味がありません。
書こうとした瞬間に自然と引き出せて、初めて「使える語彙」といえるでしょう。
テストという形式ではありますが、正解・不正解を競うものではなく、表現を試みること自体に意味があります。
本書を一通り読んだ後、このテストに取り組んでみると、どの部分が身についてどの部分がまだ曖昧かが明確になるといえます。
語彙を「覚えた」から「使える」へと昇華させる最後の仕上げとして、このテストは非常に有効な設計といえるでしょう。
こんな人におすすめ
「語彙はあるつもり」なのに、文章が平坦に感じる人
言葉は知っている。
文法的にも正しい文章は書ける。
それなのに、どこか読んでいてメリハリがない、抑揚に欠けると感じている——そういった悩みを持つ書き手には、本書が特に響くといわれています。
表現の「幅」を広げることで、文章に立体感が生まれてくるでしょう。
知っている語彙の数ではなく、「場面に合わせた適切な語彙を選ぶ力」こそが文章の豊かさを決めるといえます。
本書はまさに、その力を養うために設計されています。
小説・ライトノベル・漫画・シナリオを書いているクリエイター
本書は、現役プロ小説家が書いた実用書です。
対象読者として、小説家・ライトノベル作家・漫画家・シナリオライター・SNSクリエイターが明確に想定されています。
キャラクターの感情を描く場面、情景を映し出す場面、声や感触を伝える場面——それぞれの描写に直接使える語彙が並んでいます。
創作活動のそばに置いて、辞書のように参照しながら使う一冊として重宝されているようです。
SNSや文章コンテンツを発信しているクリエイター
小説やシナリオに限らず、SNSで文章を発信しているクリエイターにも適した内容といえます。
短い文章の中でも、語彙の選択ひとつで印象は大きく変わるものです。
「なんとなく伝わる」から「確かに伝わる」へ——その一歩を踏み出したい方にとって、本書は実践的なヒントを多く提供してくれるでしょう。
日常的な発信の質を上げたいと考えている方にも、手に取ってみる価値がある一冊といえます。
語彙力に自信がなく、入門として読みたい人
文章表現の学習書には、難解なものも多くあります。
しかし本書は、カテゴリーに沿って語彙とその使い方を示すという、わかりやすい構成をとっています。
創作の経験が浅い段階から取り組んでも、「こういう表現があったのか」という発見の連続になるでしょう。
語彙力の入門書として手に取り、手元に置き続けることができる一冊といえます。
シリーズとして「上級編」「性格・人物編」「場面設定編」なども刊行されているため、本書で語彙の世界に触れた後に、ステップアップしていく読み方もできます。
注意点
「語彙の一覧を眺める」だけでは効果が出にくい
本書は、語彙を知識として覚えることではなく、実際に使える力として身につけることを目的とした設計になっています。
そのため、ただページをめくって語彙を眺めているだけでは、十分な効果が得られにくいといえます。
気になった語彙を実際に使って文章を書いてみる、あるいは巻末の語彙力テストに積極的に取り組む——そういった能動的な使い方が、本書の効果を最大化するといえるでしょう。
参照するだけでなく、手を動かして使う姿勢で向き合うのがおすすめです。
語彙は「貯める」ものではなく「使う」ものであるという意識を持ちながら読み進めると、本書の価値が一層引き出されるといえます。
文章の「構造」や「プロット」を学ぶ本ではない
本書はあくまでも「語彙力」に特化した実用書です。
物語のつくり方、プロットの組み立て方、文章の構造といった内容を期待して手に取ると、やや期待と異なると感じるかもしれません。
本書の役割は「書きたいことをより豊かな言葉で表現するための語彙を提供すること」であり、何を書くかという創作論とは別の切り口に立っています。
物語の骨格を鍛える別の学習と並行しながら、語彙力という側面を本書で補う——そういった位置づけで活用するのがおすすめです。
「語彙」という一点に絞っているからこそ、深く実践的な内容が詰まっているといえるでしょう。
おわりに
言葉は、クリエイターにとっての道具です。
道具の種類が多ければ多いほど、できることの幅は広がります。
しかしそれ以上に重要なのは、その道具を適切な場面で適切に使えるかどうかといえるでしょう。
本書『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』は、語彙という道具を「量」だけでなく「使い方」とともに提供している点において、多くの語彙学習書とは異なる立場に立っています。
現役のプロが実際の創作現場で使える言葉を厳選し、カテゴリー別に整理して届けてくれる——その設計は、実践的な使いやすさに直結しているといえます。
「感情」「身体的特徴」「声」「感触」「情景」「色」という6つの視点から語彙を見直してみると、自分の文章に足りていたもの・余っていたものが見えてくるでしょう。
その発見が、次の文章を変えていく——そういった積み重ねが、創作の力になっていくのかもしれません。
192ページというコンパクトなボリュームの中に、実践的な語彙の世界が凝縮されています。
手元に置いて何度も開きながら使い続けることで、じわじわと表現の幅が広がっていくのを感じられる一冊といえるでしょう。
本書をきっかけに、語彙という武器を磨いていく——そういった学びのスタートラインとして、多くのクリエイターに届いてほしい一冊です。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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