警察 vs 籠城犯 vs 泥棒。それぞれの「愛」が、仙台の一夜を動かす。
ある冬の夜、仙台市内の住宅街で人質立てこもり事件が発生した。
事態を収拾しようとするSIT(特殊犯罪捜査班)。
妻を人質に取られ、銃を手に民家へ踏み込んだ誘拐グループの一員。
そしてひょんなことからその場に居合わせることになった、プロの空き巣・黒澤たち。
伊坂幸太郎さんの『ホワイトラビット』は、複数の視点と複雑に絡み合う時系列が織りなす、予測不能の籠城ミステリーです。
読み始めたら最後まで止まらない、伊坂ワールドの醍醐味が凝縮された一冊です。
あらすじなど
舞台は、冬の仙台。
誘拐グループに所属する兎田孝則(うさぎだ・たかのり)は、新妻の綿子を誘拐されてしまう。
犯人グループのリーダー・稲葉から突きつけられた要求は、通称「オリオオリオ」と呼ばれるコンサルタント・折尾豊(おりお・ゆたか)を連れてくること。
GPS発信機を頼りに折尾の居場所を突き止めた兎田は、仙台市内の高台に位置する一戸建て住宅に踏み込む。
しかし、その家には一般家庭の親子が暮らしていた。
こうして偶発的に発生した人質立てこもり事件――通称「白兎事件」は、警察のSITを巻き込みながら、思いも寄らない方向へと転がっていく。
そこに、プロの空き巣である黒澤と、その仕事仲間の中村・今村が絡み込んでくる。
息子への愛、妻への愛、娘への愛、そしてオリオン座への(?)愛。
さまざまな思惑と感情が交錯するなか、「白兎事件」の全貌はあなただけが知ることができる。
2017年9月、新潮社より刊行された書き下ろし長編ミステリーです。
著者・伊坂幸太郎さんについて
伊坂幸太郎さんは、1971年、千葉県生まれの小説家です。
東北大学法学部卒業後、システムエンジニアとして働きながら執筆活動を続け、2000年に『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。
現在は宮城県仙台市に在住しており、同市はたびたび作品の舞台として登場します。
主な受賞歴として、『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞
短編「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞
『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞&第21回山本周五郎賞
『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞などがあります。
代表作は『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』『グラスホッパー』など多数。
伏線を巧みに張り巡らせ、最終盤で鮮やかに回収するスタイル
キャラクター同士の軽妙な掛け合い、そして読後感の爽快さが持ち味の作家です。
多くの作品が映画化・ドラマ化されており
日本を代表するエンタメ小説家のひとりとして高い評価を受けています。
直木賞については複数回候補に挙がりましたが、2008年に自ら選考対象からの辞退を表明したことでも知られています。
読みどころ
複数の視点が交錯する多層構造
本作の最大の特徴は、複数の登場グループが異なる視点で描かれながら、物語が同時進行していく構成にあります。
籠城犯として家に踏み込んでしまった兎田、警察側のSIT隊員・夏之目(なつめ)、そして偶然その場に居合わせてしまった黒澤と仕事仲間たち。
それぞれの思惑が複雑に交差し、時系列も入り組んだ構成になっています。
一見バラバラに見えるエピソードが、読み進めるうちに鮮やかにつながっていく。
その瞬間の快感こそ、伊坂作品の真骨頂といえるでしょう。
黒澤というキャラクターの魅力
本作の大きな見どころのひとつが、過去の伊坂作品に登場したキャラクター・黒澤の再登場です。
黒澤は腕利きの空き巣で、「盗んだものをレシートのようなメモに書いて置いていく」という独自のルールを持つ、一風変わった人物。
冷静沈着でありながら、ときに真顔でユーモアを発する独特の存在感があります。
黒澤は『ラッシュライフ』『重力ピエロ』『フィッシュストーリー』などにも登場しており、既存の伊坂ファンにとっては懐かしいキャラクターとの再会となるでしょう。
初めて伊坂作品を読む方でも、黒澤の活躍はそれだけで十分に楽しめる内容になっています。
軽妙な掛け合いと伏線の妙
登場人物たちの掛け合いは、緊迫した状況にもかかわらず独特のテンポと笑いを生み出します。
特に黒澤・中村・今村の3人が交わす会話は、読んでいて思わず笑みがこぼれる場面も多い。
重いテーマを扱いながらも、陰鬱な雰囲気にならないのが伊坂幸太郎さんの作風の特徴。
また、物語のあちこちにさりげなく散りばめられた小さなエピソードや台詞が、終盤で意味を持って回収されるとき、読者は「そういうことだったのか」という快感に包まれます。
オリオン座にまつわるモチーフ、ヴィクトール・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』との関連など、作品に散りばめられた要素も見どころのひとつです。
こんな人に特におすすめ
はじめて伊坂幸太郎作品を読む人
出版社・新潮社も「伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX」と紹介しているように、伊坂ワールドへの入口として適した作品です。
登場人物のキャラクターが立っており、テンポよく読み進められるため、初めて伊坂作品に触れる方にも入りやすい一冊といえます。
ミステリー・サスペンスが好きな人
人質立てこもりという緊迫した状況で、警察・犯人・空き巣という三者が絡み合う展開は、スリリングな読書体験を求める方に最適。
予測のつかない展開と、最後まで気が抜けない構成が魅力です。
複数の登場人物の視点が好きな人
複数の立場から同一の事件を描くスタイルは、パズルのピースが合わさっていくような読書体験をもたらします。
『ラッシュライフ』や『アヒルと鴨のコインロッカー』が好きな読者なら、特にこの構成の面白さを楽しめるでしょう。
過去の伊坂作品を読んだファン
黒澤・中村・今村など過去作に登場したキャラクターたちの再登場は、長年の伊坂ファンにとってひとつのご褒美のような楽しみになっています。
ただし、前作を読んでいなくても物語の理解には影響ありません。
注意点など
時系列が入り組んでいる
本作は視点と時系列が頻繁に切り替わります。
「今誰の視点で、いつの話なのか」を意識しながら読む必要があり、一度流し読みをしただけでは全体像を掴みにくいという声もあります。
じっくり腰を据えて読むのが、この作品を最大限に楽しむコツといえるでしょう。
リアリティよりも「物語の楽しさ」優先
籠城事件の展開に「それはさすがに無理があるのでは」と思う場面があるかもしれません。
ただ、伊坂幸太郎さんの作品は基本的に「物語を楽しむこと」が最優先の設計になっています。
整合性よりも読後感を重視する作風であることを理解したうえで読むと、純粋に楽しめる作品です。
反社会的な職業の登場人物が多い
誘拐グループ・空き巣など、犯罪に関わる人物が主要キャラクターとして登場します。
ただし、コメディタッチの描写が多く、暗さや重さはそれほどありません。
それよりも、彼らが持つ人間的な側面や「愛」の形が丁寧に描かれていることが印象的です。
おわりに:「白兎事件」の全貌を知れるのはあなただけ
伊坂幸太郎さんの『ホワイトラビット』は、2017年に新潮社から刊行された書き下ろし長編ミステリーです。
新潮社から出る書き下ろしとしては、本屋大賞を受賞した『ゴールデンスランバー』以来、約10年ぶりの作品となりました。
仙台の住宅街で起きた一夜の立てこもり事件を、警察・誘拐グループ・空き巣という三者の視点から描く本作。
複雑に絡み合う時系列と伏線が、最後にすっきりとひとつの物語へと収束する快感は、まさに伊坂幸太郎さんにしか書けない読書体験です。
息子への愛、妻への愛、娘への愛。
それぞれが抱える「誰かを守りたい」という思いが、ときに笑いを、ときに緊張を生み出しながら物語を動かしていきます。
読後感は爽快で、全員がベストエンドではないにせよ、それぞれに納得のいく着地点へと向かうラストは、読み終えた後に温かい余韻を残してくれます。
「楽しさを追求したら、こういう小説になりました」という伊坂幸太郎さんの言葉通り、エンタメとしての純粋な面白さが詰まった一冊です。
ミステリーが好きな方にも、伊坂作品が初めての方にも、自信を持っておすすめできる作品。
「白兎事件」の全貌を知ることができるのは、この本を読んだあなただけ。
ぜひ手に取ってみてください。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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