営業スキルで殺し屋を口説く——前代未聞のビジネスエンタメが話題
『殺し屋の営業術』は、野宮有さんが第71回江戸川乱歩賞を受賞してデビューした話題作です。
2026年本屋大賞第6位にランクインし、2025年ブランチBOOK大賞も受賞するなど、多方面から注目を集めている一冊といえます。
「殺し屋」と「営業術」という一見まったく相容れない二つの言葉を組み合わせたタイトルが、まず強烈な印象を与えます。
読む前から「いったいどういう展開になるのか」と想像をかき立てられ、手に取った瞬間からその世界観に引き込まれるでしょう。
凄腕営業マンが殺し屋に標的にされるという、ありそうでなかった設定。
その状況から主人公がどう切り抜けるのかが、この物語の核心となっています。
ユーモアと緊張感が絶妙に絡み合い、ビジネス小説としてもエンタメ小説としても高い評価を得ている作品です。
あらすじ——口八丁で「死」を回避した男の無謀な挑戦
会社の営業成績ナンバーワンを誇る凄腕営業マン、鳥井。
数字に強く、トーク力に秀でた彼は、ある日突然、2人の殺し屋に命を狙われます。
標的にされた理由も、逃げ場も、助けを求める相手もない状況。
普通の人間であれば絶望するしかないその場面で、鳥井はなんと持ち前の営業スキルを駆使して殺し屋たちを説得しはじめます。
交渉の末に提示されたのは、「2週間で2億円」という途方もないノルマ。
殺されるか、不可能に近い条件をクリアするか——という究極の選択を前に、鳥井はノルマ達成の道を選びます。
こうして、殺し屋と営業マンという異色のコンビが誕生することになるのです。
殺人請負会社の全権を任された28歳の女性エージェント・美紅、そして彼女とコンビを組む190センチの屈強な殺し屋・耳津。
この三者が繰り広げる丁々発止のやり取りが、物語を鮮やかに彩ります。
命がけの「営業活動」が果たしてどこへ向かうのか——その結末は、ぜひ本書で確認してほしいところです。
著者について——江戸川乱歩賞が認めた新たな才能
野宮有さんは、第71回江戸川乱歩賞を受賞した本作でデビューを飾った作家です。
江戸川乱歩賞は、ミステリー界において権威ある登竜門として知られており、その受賞作としてデビューすることは、作家としての高い実力を示すものといえます。
デビュー作でありながら、2026年本屋大賞第6位、2025年ブランチBOOK大賞受賞という輝かしい評価を得ており、その才能はすでに広く認められているといえるでしょう。
受賞歴や代表作の詳細については、書籍や各種メディアでご確認いただくのがよいでしょう。
今後の活躍が大いに期待される、注目の書き手です。
読みどころ
営業スキルが「命の武器」になる逆転の発想
この作品の最大の魅力は、ビジネスの現場で磨かれたスキルが、非日常的な極限状況で発揮されるというユニークな構造にあります。
鳥井が殺し屋を相手に繰り出すトーク術は、どこか笑えて、しかしどこかリアルで、奇妙な説得力を持っています。
「なぜそれで相手が動くのか」という論理的な裏付けがあるからこそ、物語は単なるギャグに終わらず、読者を真剣に引き込む力を持っているといえます。
営業とは何か、人を動かすとはどういうことか——そういった問いを、エンターテインメントの形で自然に体感できる構成が秀逸です。
ビジネス書を読むような実用的な発見と、フィクションを楽しむ純粋な興奮が同時に得られるという、稀有な読書体験を届けてくれる作品でしょう。
個性豊かな三者の化学反応
鳥井・美紅・耳津という三人のキャラクターは、それぞれがまったく異なる価値観と行動原理を持っています。
凄腕の営業マン、クールな女性エージェント、屈強な殺し屋——この三者が一つの目標に向かって動き出したとき、物語はまったく予測できない方向へと転がっていきます。
キャラクター同士の掛け合いは、緊張感とユーモアが紙一重の距離で共存しており、思わず口元が緩むような場面が随所に散りばめられているといわれています。
三人それぞれの立場と思惑が絡み合う中で、物語が進むほどにキャラクターへの愛着が深まっていく——そういった丁寧な人物造形が、この作品を単なる一発芸で終わらせない理由の一つといえるでしょう。
190センチの殺し屋・耳津と、口の立つ営業マン・鳥井の関係性の変化は、特に見逃せないポイントです。
「2週間・2億円」という圧倒的なタイムリミット
物語全体を貫く「2週間で2億円」というノルマは、読者にも強烈なプレッシャーを与える装置として機能しています。
タイムリミットがあることで物語のテンポが自然に引き締まり、ページをめくる手が止まらない緊張感が生まれています。
2億円という金額の現実感と非現実感のバランスが絶妙で、主人公がどんな手を使ってそのノルマに挑んでいくのかという興味が、物語の最後まで途切れることなく続きます。
「次の一手はなんだ」という期待感が章をまたいで持続するのは、プロットの設計力の高さを感じさせます。
デビュー作にしてこれほどの構成力を見せた野宮有さんへの評価が高いのも、この作品を読むと納得できるでしょう。
こんな人におすすめ
エンタメとしてのミステリーを求めている人
江戸川乱歩賞受賞作と聞くと、重厚で謎解き重視の作風を想像するかもしれません。
しかしこの作品は、ミステリーの骨格を持ちながらも、軽快なテンポとユーモアを前面に押し出したエンターテインメント作品です。
読んでいる間、どこかスカッとするような爽快感があるといった声も聞かれており、「難しいミステリーは苦手だけど面白い小説を読みたい」という方にも広く届く一冊といえるでしょう。
ビジネスや交渉術に関心がある人
鳥井が見せる営業スキルや交渉の駆け引きは、フィクションでありながらも、実際のビジネスの場に通じる普遍的なエッセンスを含んでいます。
「どうすれば人を動かせるのか」という問いに対して、物語という形式を通じて考えさせられる部分が多い作品です。
ビジネス書を好んで読む方にとっても、新鮮な視点で「交渉」や「説得」について考えるきっかけになるでしょう。
個性的なキャラクター小説が好きな人
主要三人のキャラクターがあまりにも立っており、読後には彼らのことが頭から離れなくなるといった感想も多く聞かれます。
キャラクター同士の関係性の変化を楽しむ「人間ドラマ」としての読み方もできる作品です。
「続きが気になってしょうがない」という没入感をもたらすキャラクター造形は、この作品の大きな強みといえるでしょう。
デビュー作から追いかけたい新人作家を探している人
野宮有さんはこの作品でデビューしたばかりの作家です。
デビュー作にしてこれほどの完成度と評価を得ているという事実は、今後の作品への期待を自然に高めます。
「この作家の次の作品も読みたい」と思わせる魅力を持つ書き手と出会う喜びは格別で、その意味でもいま手に取っておきたい一冊といえるでしょう。
注意点
「殺し屋もの」に身構える必要はあまりない
タイトルや設定を見て、過激な暴力描写やグロテスクな場面が多いのではと心配する方もいるかもしれません。
しかしこの作品は、あくまでエンターテインメントとしての明るいトーンが全体を貫いているとされており、そういった描写が苦手な方でも読みやすい作風といわれています。
「殺し屋」という要素はあくまで物語の設定上のギミックであり、コメディーとシリアスのバランスを丁寧に保ちながら描かれている点は、多くの読者から評価されているポイントです。
ただし、描写の詳細については実際に読んで確認していただくのが確実です。
スピード感のある展開についていく覚悟が必要かもしれない
テンポの速い作品であるぶん、設定や人物関係の説明が流れるように進む場面もあります。
「気づいたら物語に乗り遅れていた」という感覚になることがないよう、集中して読める環境で手に取るのがよいでしょう。
一方で、そのスピード感こそがこの作品の大きな魅力の一つでもあり、「読み始めたら止まらなかった」という声が多いのも事実です。
おわりに——「口で世界を変える」物語の痛快さ
『殺し屋の営業術』は、そのタイトルの奇抜さだけで終わらない、確かな物語の力を持った作品です。
凄腕営業マン・鳥井が体現するのは、「人間は言葉で動かせる」という、ある種の楽観的な信念です。
そしてその信念が、殺し屋という絶対的な暴力の前でも通用するかもしれないというフィクションの逆説が、この物語に独特のカタルシスをもたらしています。
第71回江戸川乱歩賞という権威ある評価に加え、2026年本屋大賞第6位・2025年ブランチBOOK大賞という幅広い層からの支持は、この作品が単なる話題先行ではなく、本質的な面白さを持っていることを示しているといえるでしょう。
ビジネスシーンで感じるあの「交渉の緊張感」を、小説の中で疑似体験できる稀有な一冊。
エンタメとしても、人間ドラマとしても、どの角度から読んでも楽しめる構造になっているというのが、幅広い読者から支持を集めている理由でしょう。
2025年8月29日に講談社より刊行されたこの作品は、いま最も注目すべきデビュー小説の一つといえます。
野宮有さんの今後の作品にも、大きな期待が寄せられています。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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