焼きたてのパンの香りとともに、また新しい謎が届いた。
漫画家デビューが決まり、大学二年生として新しい季節を迎えた市倉小春。
おなじみのパン屋〈ノスティモ〉には、初めての後輩も加わり、にぎやかな春がはじまる。
しかし日常のなかにはやっぱり、小さな謎が潜んでいて——。
土屋うさぎさんの『謎の香りはパン屋から2』は、第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したベストセラーの続編です。
メロンパン、デニッシュ、カツサンド、フレンチトースト、塩パン……。
香ばしい香りがページをめくるたびに漂ってくるような、心温まる〈日常の謎〉連作ミステリー第二弾です。
あらすじなど
舞台は、大阪府豊中市にある小さなパン屋〈ノスティモ〉。
大学二年生の春を迎えた市倉小春(いちくら・こはる)は、念願だった漫画家デビューが決まり、少し大人になった気持ちでアルバイトを続けていた。
店長の堂前(どうまえ)、ギャルのレナ先輩というおなじみのメンバーに囲まれる日々は変わらず賑やかで、居心地がいい。
そこへ新しく加わったのが、高校生の後輩・杏樹(あんじゅ)。
「来月は毎日でもシフトに入ります」とやる気いっぱいに退勤した杏樹が、数時間後に退職したいと連絡を寄越してきて——。
こうして始まる小春の謎解きを軸に、パン屋〈ノスティモ〉をめぐる五つの物語が紡がれていく。
前作で第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した土屋うさぎさんが、満を持して送り出した連作ミステリー第二弾。
2026年4月8日、宝島社より刊行されました。
著者・土屋うさぎさんについて
土屋うさぎさんは、1998年8月、大阪府箕面市生まれ、東京都府中市育ちの小説家・漫画家です。
大阪大学工学部応用理工学科を中退後、漫画アシスタントを続けながら、漫画家・小説家としての活動を並行して進めてきました。
2023年には『あぁ、我らのガールズバー』で集英社・第98回赤塚賞準入選、同年『見つけて君の好きな人』で小学館・「創作百合」漫画賞佳作を受賞。
2024年には『文系のきみ、理系のあなた』で一迅社・第30回百合姫コミック大賞翡翠賞を受賞し、漫画分野でも着実に実績を積み重ねてきました。
同年、第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『謎の香りはパン屋から』で小説家デビュー。
現役の漫画家・漫画アシスタントとして培った観察眼やキャラクター描写の力が、小説の世界でも存分に発揮されていると評価されています。
ジャンルを横断しながら精力的に活動を続ける、いま注目の若手クリエイターです。
読みどころ
おなじみキャラクターたちの続きの物語
本作の楽しみのひとつは、前作で愛着が生まれたキャラクターたちが大学二年生の春にどう変化しているかを追えること。
1巻では大学一年生として新しいアルバイト先に飛び込んだ小春が、今作では念願の漫画家デビューという大きな一歩を踏み出した状態でスタートします。
成長した小春の観察眼と推理は、2巻でもさりげなく日常の謎を解きほぐしていく。
堂前店長のパンへの深すぎる愛情も、レナ先輩の強烈な個性も健在で、おなじみの空気感がそのまま続いています。
新キャラクター・杏樹の登場
2巻から加わる高校生の後輩・杏樹は、物語に新しい風を吹き込む存在です。
小春にとって初めての後輩という関係性が、これまでとは少し違う視点や感情を引き出し、物語の幅を広げています。
「来月は毎日でもシフトに入る」と言いながらその日のうちに退職を申し出る——その謎から始まる第一話は、2巻全体の幕開けとして絶妙な引きになっています。
パンが彩る五つのミステリー
2巻でテーマとなるパンは、メロンパン、デニッシュ、カツサンド、フレンチトースト、塩パン。
どれも身近で親しみやすいパンばかりです。
章ごとに取り上げられるパンにまつわる知識や逸話が、物語の余白を豊かにしてくれます。
本作のシリーズは謎解きがゴールではなく、謎の向こう側にある人と人とのつながりや感情の機微を描くことに重きを置いています。
読み終えたとき、謎が解けたすっきり感と同時に、登場人物たちへの温かい眼差しが心に残るでしょう。
こんな人に特におすすめ
1巻を読んでシリーズが好きになった人
前作のファンにとっては、あのキャラクターたちのその後が読めるだけで嬉しい一冊です。
1巻の世界観をそのまま引き継ぎながら、新しい物語が展開されていくため、安心して読み始めることができます。
心が疲れているときに癒しを求めている人
殺人事件や大きな事件は起こりません。
登場人物が皆どこか憎めなく、読んでいてストレスになる場面がないのが本シリーズの大きな特徴。
誰も死なず、すべての謎が穏やかな着地点へと向かっていくため、心を緩めたいときにぴったりの作品といえます。
日常系ミステリー・コージーミステリーが好きな人
日常のほんの小さな違和感から謎を見つけ出し、丁寧に解き明かしていくスタイルは、コージーミステリーの醍醐味そのものです。
刺激や緊張感よりも、ほっとした読後感を求める読者にとって、本シリーズは心地よい選択肢になるでしょう。
パンが好きな人
読めば確実にパンが食べたくなります。
章ごとに登場するパンのうんちくや描写が丁寧で、パン好きにはたまらない作品。
近所のパン屋さんへ足を運んだり、お気に入りのパンを手に取ったりしながら読むのも、楽しみ方のひとつかもしれません。
注意点など
1巻を読んでいなくても楽しめるが、読んでから読むのがおすすめ
2巻から読み始めることもできますが、登場人物への愛着は1巻から積み上げたほうが深くなります。
前作では小春や堂前店長、レナ先輩、福尾さんといった主要キャラクターのバックグラウンドが丁寧に描かれているため、1巻から順番に読むとより楽しめるでしょう。
本格ミステリーを期待すると物足りなく感じる場合も
本シリーズは、緻密なトリックや意外性の強いどんでん返しを主軸にしたミステリーではありません。
解かれる謎はいずれも日常的な規模で、事件の真相よりも、そこに至る人間模様や感情の動きに重点が置かれています。
複雑な推理や鮮烈な驚きを求める方は、あらかじめその点を踏まえたうえで手に取ることをおすすめします。
おわりに:焼きたてのパンとともに、また小春に会いに行こう
土屋うさぎさんの『謎の香りはパン屋から2』は、第23回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作のベストセラー続編として、2026年4月8日に宝島社より刊行されました。
大学二年生になり、漫画家デビューという夢への一歩を踏み出した小春が、今日もパン屋〈ノスティモ〉で働きながら、日常のなかに潜む小さな謎と向き合っていく。
前作から引き継がれる温かい世界観はそのままに、新キャラクターの登場や小春自身の成長が加わり、シリーズとしての厚みが増した一冊です。
メロンパン、デニッシュ、カツサンド、フレンチトースト、塩パン——それぞれの香りが誘う五つの物語は、読み終えたあとに焼きたてのパンのような温かさをじんわりと残してくれます。
日常に疲れたとき、少し心を緩めたいとき、ふと手に取りたくなる。
そんな作品がまた一冊増えました。
前作を読んでいる方も、本作からシリーズに触れる方も、ぜひ〈ノスティモ〉の扉を開いてみてください。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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