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貴志祐介『さかさ星』あらすじ・解説|どんな話かわかりやすく

本

「呪われよ——子々孫々の果てるまで」。

戦国の血に染まった呪物が、現代に牙をむく。

貴志祐介さんの『さかさ星』は、単行本の長編ホラーとしては14年ぶり、文庫書き下ろしを含むと11年ぶりとなる待望の新刊です。

『黒い家』や『悪の教典』で知られる貴志祐介さんが、6年の歳月をかけて書き上げた渾身の一作。

戦国時代から続く名家・福森家を舞台に、おびただしい数の呪物と、それらに秘められた人間の悪意と業が渦巻く、重厚な伝奇呪物ホラーです。

モダンホラーの枠組みの中に、日本古来の怪談の怖さをを埋め込むという新しい試み——貴志祐介さんの新境地ともいえる意欲作として、多くの読者から注目を集めています。

怪異とヒトコワ、両方が詰め込まれた贅沢な物語。

ホラー好きにとっては見逃せない一冊といえるでしょう。

さかさ星




あらすじ

戦国時代から続く名家・福森家の屋敷で、凄惨な一家惨殺事件が起きました。

死体はいずれも人間離れした手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていました。

福森家と親戚関係にある中村亮太は、ある理由から霊能者の賀茂禮子とともに屋敷を訪れ、事件の調査を行うことになります。

亮太はユーチューバーで、やや軽くて頼りないところのある青年。

動画撮影を目的に屋敷へと踏み込んだ亮太を迎えたのは、家の内外を埋め尽くす無数の呪物でした。

庭に植えられた忌木、屋根に据えられた鬼瓦、上下逆さまにされた大黒柱——。

霊能者の賀茂禮子によれば、福森家が代々収集してきた名宝・名品の数々が実は恐るべき呪物であり、そのいずれか一つが惨劇を引き起こしたのだといいます。

賀茂の話を信じきれない亮太でしたが、呪物が巻き起こす超常的な事象を目にするにつれ、しだいに危機感を覚えはじめます。

一家の生き残りの子供たちにも呪いの魔の手が迫るなか、真の呪物は何なのか、そして誰が何のために仕掛けたのか——旧家の歴史に隠された、おぞましい秘密が明かされていきます。


著者について

貴志祐介さんは、1959年大阪府生まれ。

京都大学経済学部を卒業後、生命保険会社に勤務し、その後作家へと転身されました。

1996年に『十三番目の人格ISOLA』で日本ホラー小説大賞長編賞佳作を受賞し、デビューを飾ります。

翌1997年に発表した『黒い家』では第4回日本ホラー小説大賞を受賞、130万部を超えるベストセラーとなり、ホラー小説の書き手として一躍注目を集めました。

その後も精力的に執筆を続け、2005年の『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、2008年の『新世界より』で日本SF大賞、2010年の『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞しています。

ホラー、ミステリー、SFと幅広いジャンルで高い評価を受け続けてきた貴志祐介さん。

本作『さかさ星』は、そんな著者が新境地として挑んだ和風伝奇ホラーの大作です。

受賞歴・代表作以外の詳細については、書籍でご確認ください。


読みどころ

呪物が語る、血まみれの因縁

本作の最大の魅力は、登場する呪物の一つひとつに刻まれた、おぞましい因縁の深さにあります。

幽霊画、日本刀、鬼瓦——それぞれの呪物には、戦国の時代から連綿と受け継がれた恨みや業が染みついています。

物語の前半では、怪異を招く品々の来歴が丁寧に語られていきます。

それぞれのエピソードには強烈な念が込められており、読者を納得させるだけの悲惨な背景が緻密に作り上げられています。

まがまがしい気配を発する呪物の背景を知るほどに、読む手がとまらなくなっていく——そんな構造の物語です。

モダンホラーと怪談の融合という新しい試み

貴志祐介さんはこれまで、心理学や生物学など理系の知識をベースにしたホラーを多く手がけてきました。

しかし本作では、「モダンホラーの枠組みに怪談を埋め込む」という、著者にとっても新たな挑戦が行われています。

「ミステリーの手法で書かれたホラー」であるモダンホラーと、『雨月物語』に代表される日本の怪談——その二つを組み合わせることで生まれた、独特の世界観が広がります。

「この世界の外側にある世界、呪術が効力を発揮する世界の法則をもとにしたミステリー」という著者の言葉が示すように、呪術の論理に基づいた謎解きの要素も随所に見られます。

真犯人は誰なのか、最も忌まわしい呪物はどれなのか——そこにミステリーとしての興味が生まれます。

ヒトコワとオカルトが交差する恐怖

「人への恐怖があって初めてオカルトも怖くなる」という貴志祐介さんの考え方が、本作の底流に流れています。

オカルトの恐怖だけでなく、人間そのものの怖さ——悪意、嫉妬、執念——が物語を駆動していきます。

呪物が招く超常的な現象の背後には、常に人間の業が透けて見える。

怪異に震えながらも、その怪異を生み出した人間の闇にも戦慄する——そういった二重の恐怖が味わえる点が、本作ならではの読みどころといえます。

霊能者の賀茂禮子が善玉なのか悪玉なのかという謎も、物語を最後まで引っ張る重要な要素になっています。


こんな人におすすめ

ホラー小説が好きな方

『黒い家』『天使の囀り』『悪の教典』など、ホラー・ミステリー・SFと幅広いジャンルで傑作を生み出してきた貴志祐介さんの、待望の長編ホラーです。

「ホラー史に輝く傑作『黒い家』『天使の囀り』の興奮がよみがえる」と評されるほどの読み応えがあるとされており、貴志祐介さんのファンであれば特に注目したい一冊といえるでしょう。

圧倒的なボリュームと密度を誇るモダンホラー巨編として、ホラー好きの間で話題になっています。

祟り系・呪物系の作品が好きな方

庭に植えられた忌木、惨劇に関わった日本刀、怪異を招く幽霊画——これでもかと言わんばかりに登場する呪物の数々が、本作の大きな見どころです。

呪物の来歴や力をもとに推測を重ねていくくだりには、確かにミステリーのテイストも感じられます。

祟り・呪いのテーマが好きな方、いわくつきの品々にまつわる物語が好きな方には、特に響く作品といえるでしょう。

和風ホラー・伝奇ホラーが好きな方

おどろおどろしい和風の怪異を正面から扱った本作は、貴志祐介さんのこれまでの作品とは一線を画す試みです。

戦国時代まで遡る旧家の歴史、土着的な呪術の世界、日本の怪談の空気——それらが現代の物語と交差していく伝奇呪物怪奇譚の大作です。

「モダンホラーの枠組みに怪談を埋め込む」という著者の試みに、伝奇ホラーファンなら強い興味を覚えるでしょう。

読み応えのある作品を求めている方

序盤はやや世界に入り込むのに時間がかかるといわれていますが、そこを超えると一気に先が気になって読む手がとまらなくなる——そんな声が多く聞かれます。

膨大なボリュームに見合うだけの情報量と物語の密度があり、読後には十分な満足感が得られるとされています。

じっくりと腰を据えて読みたい方、骨太な長編を求めている方に向いている作品といえるでしょう。


注意点

ボリュームの多さと情報量

本作は非常に大きなボリュームを持つ長編小説です。

登場する呪物の数が多く、それぞれに詳細な来歴やエピソードが付随するため、読み進めるうちに情報が膨大になっていきます。

過去の人物の名前や多くの呪物が登場するため、途中から読み疲れを感じる読者も一部にはいるようです。

一度に一気読みするよりも、章ごとに整理しながら読み進めるのがおすすめかもしれません。

解説が多く、恐怖感が薄れるという声も

語り手の亮太と霊能者の賀茂禮子が、異常現象を懇切丁寧に解説していくという作品の構造上、得体の知れない恐怖をじっくり味わうよりも情報処理の感覚が強くなる、という意見もあります。

「理系知識をベースにしたモダンホラーとしての貴志祐介さんらしさ」と、「説明しすぎることによる怪異の薄まり」は表裏一体といえるかもしれません。

また、過去の傑作と比較すると蘊蓄が多め・怖さが少なめと感じる方もいるようです。

『黒い家』や『悪の教典』に対して期待値が非常に高い方は、その点を踏まえた上で手に取るのがよいでしょう。


おわりに

「呪われよ——子々孫々の果てるまで」。

その言葉が示すように、『さかさ星』は時代を越えた呪いの連鎖を描いた物語です。

単行本の長編ホラーとしては14年ぶり、文庫書き下ろしを含むと11年ぶりとなる、貴志祐介さんの渾身の新刊。

『小説 野性時代』連載開始から完成まで6年の歳月をかけたという事実が、その密度の高さを物語っています。

「ホラーを書くことは呪術に近い行為」という著者の言葉が、本作には色濃く刻まれています。

文化人類学への深い関心から生まれた呪術の論理、日本の怪談の空気とモダンホラーの手法——それらが合わさって、唯一無二の世界観が生み出されています。

怪異とヒトコワ、両方の恐怖が詰め込まれた贅沢な物語。

呪物の来歴を知るほどに底知れない闇が広がり、旧家の秘密が明かされるにつれて恐怖の輪郭が像を結んでいきます。

序盤は世界への入り込みに時間がかかるかもしれませんが、そこを超えた先に待つのは、圧倒的な読み応えの伝奇呪物ホラーの世界です。

貴志祐介さんの新境地に触れてみたい方、重厚な和風ホラーを求めている方に、広く届いてほしい一冊といえます。

さかさ星

この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。

おわり

ジャケドロ661

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