星は、続いていく——『星を編む』が描く愛と仕事と人生の物語
『星を編む』は、2023年本屋大賞を受賞した『汝、星のごとく』の続編・スピンオフ作品です。
著者は凪良ゆうさん。
前作で描かれた愛の物語が、別の角度から照らし出される一冊となっています。
連作形式で「星を編む」と「波を渡る」の2編を収録しており、それぞれに独立した輝きを持ちながら、前作との深いつながりを感じさせる構成です。
出版社は講談社。発売は2023年11月8日。
前作を読んだ方にとっては、あの物語の「その後」と「裏側」を知ることができる特別な一冊といえます。
前作を愛したすべての読者に向けて、丁寧に編まれた続章です。
あの星の、裏側と続きを——あらすじ
本作は「星を編む」と「波を渡る」という2編から構成されています。
「星を編む」は、漫画原作者・作家として活躍する北原草介を担当した、二人の編集者の物語です。
植木渋柿というベテラン男性編集者と、二階堂絵理という若手女性編集者。
この二人が、草介の才能という名の星を輝かせるために、それぞれの魂を燃やしていく様子が描かれます。
前作ではあくまでも背景に近い存在だった「編集者」という職業の人々が、本作では中心に据えられています。
才能を見出し、育て、世に送り出す者たちの葛藤と情熱が、静かに、しかし力強く描き出されていきます。
「波を渡る」は、前作のヒロインである暁海が主人公です。
花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも彼女の人生は続いていく——その先の暁海の姿が、丁寧に描かれています。
前作を読んだ読者であれば、暁海というキャラクターへの思いを複雑に抱えているかもしれません。
そのような読者に向けて、凪良ゆうさんが用意した「続き」の物語です。
凪良ゆうさんについて
凪良ゆうさんは、読者からの支持を集める人気作家です。
前作『汝、星のごとく』が2023年本屋大賞を受賞し、その名を広く知らしめました。
その受賞作の続編・スピンオフとなる本作は、前作ファンのみならず、多くの読書家が注目した一冊です。
愛や人生の複雑さ、そして生きることの痛みと美しさを描く作風が、多くの読者の心に響いていると評価されています。
登場人物一人ひとりの内面を丁寧に掘り下げ、人間の弱さと強さを静かに見つめる筆致は、凪良ゆうさんの作品を特徴づけるものといえます。
本作においても、その作風は変わらず、むしろ前作で語り切れなかったものを掬い取るように物語が紡がれています。
その他の受賞歴・代表作の詳細については、ぜひ書籍や公式情報でご確認ください。
読みどころ
編集者という「影の主人公」たちの物語
前作『汝、星のごとく』において、北原草介の才能は物語の中心にありました。
しかし本作「星を編む」では、その才能を世に届けるために動いた人々——編集者の視点から物語が描かれます。
植木渋柿というベテランと、二階堂絵理という若手。
この二人が、それぞれまったく異なる形で草介の仕事と向き合っていく様子は、読み応えのある構造を持っています。
才能を輝かせる側の人間にも、それぞれの人生があり、葛藤があり、燃やすべき何かがある。
そのことが、本作を通じて静かに伝わってくるといえます。
創作の現場に関心がある方にとっては、編集者という職業の内側が垣間見える点も興味深いでしょう。
作家と編集者の関係性、才能に向き合うということの意味——そういった問いが、物語の随所に散りばめられています。
暁海のその後——愛の果てに続く人生
前作のヒロインである暁海は、多くの読者にとって忘れがたい存在であるといえます。
彼女が歩んだ道は、決して平坦なものではありませんでした。
「波を渡る」では、花火のように煌めいた日々を経た後、暁海の人生がどのように続いていくかが描かれます。
愛の果てにも、人生は続いていく。
その当たり前のようでいて、深く胸に刺さる真実を、凪良ゆうさんはこの物語で静かに示しています。
前作で暁海に強く感情移入した読者ほど、この「続き」を読むことで、何かが解放されるような感覚を覚えるかもしれません。
彼女がどのように自分の波を渡っていくのか——それは、ぜひ本作でご確認ください。
人は喪失の後にも、新しい朝を迎えることができる。
本作はそのような問いかけを、押しつけがましくなく、そっと差し出してくれる物語です。
「続編」としての誠実さ
本作が多くの読者から評価されている点の一つに、前作への誠実さが挙げられます。
前作の世界観を壊さず、しかし新たな視点を加えることで物語を豊かにしていく。
その手つきが丁寧であると、読書家のあいだで話題になっています。
前作では語られなかった「もう一つの物語」を描くにあたって、凪良ゆうさんは登場人物たちへの敬意を忘れていないといえます。
草介という人物が、編集者たちの目にはどのように映っていたのか。
暁海というひとりの女性が、愛の後にどのように生きていくのか。
これらの問いに丁寧に向き合うことで、本作は前作の「補完」ではなく、独立した価値を持つ作品として成立しています。
前作を読んでいない方でも楽しめないわけではありませんが、前作を先に読むことを推奨します。
こんな人におすすめ
前作『汝、星のごとく』を読んで余韻が続いている方
前作で北原草介や暁海に強く引きつけられた方にとって、本作は待望の一冊といえます。
あの物語の「続き」と「裏側」が、本作で丁寧に描かれています。
前作を読み終えた後、もっと知りたい、まだこの世界にいたいと感じた方に、特に強く届く作品でしょう。
仕事と情熱をテーマにした物語が好きな方
「星を編む」は、編集者という職業の人間たちが主人公です。
才能を輝かせるために魂を燃やして働く、植木渋柿と二階堂絵理の物語は、仕事に情熱を注ぐ人間の姿を丁寧に描いています。
仕事とは何か、他者の才能に向き合うということはどういうことかを考えたい方に、響く内容といえます。
愛の後の人生を描いた物語を求めている方
「波を渡る」は、愛が終わった後にも続く暁海の人生を描いています。
愛だけが人生ではないこと、それでも人は生きていくことを、静かに示している物語です。
喪失を経験した後の日々に関心がある方や、人生の複雑さをテーマにした作品を好む方に、特に合うでしょう。
連作形式の小説が好きな方
本作は「星を編む」と「波を渡る」の2編から成る連作形式です。
それぞれに独立した物語として完結しながらも、互いに深く響き合う構成が特徴です。
連作形式ならではのリズムと余韻を楽しみたい方にとって、本作は心地よい読書体験をもたらしてくれるでしょう。
注意点
前作を先に読むことを推奨します
本作は前作『汝、星のごとく』の続編・スピンオフにあたります。
本作単体でも物語として成立している部分はありますが、前作の登場人物や出来事が前提となっている場面も多くあります。
前作を読んでいない状態で本作を読むと、物語の深みや感情の重さが十分に伝わらない可能性があります。
できれば前作から先に読み進めるのがおすすめです。
軽い気持ちで読める「ハッピーエンド」ではありません
凪良ゆうさんの作風の特徴として、人生の痛みや複雑さを正面から描くスタイルが挙げられます。
本作においても、登場人物たちは決して平坦な道を歩んでいるわけではありません。
特に「波を渡る」は、前作の余韻を引き継ぐかたちで、感情的に重くなる場面もあるといえます。
気持ちが落ち着いているときに、じっくりと向き合いながら読むのがよいかもしれません。
おわりに
『星を編む』は、前作『汝、星のごとく』が描いた世界をさらに深く、さらに広く展開していく一冊です。
才能という星を編もうとした編集者たちの物語と、愛の果てにも続いていく暁海の物語。
どちらも、前作とは異なる角度から人間の営みを照らし出しています。
星が輝くためには、その光を信じる誰かが必要です。
植木渋柿と二階堂絵理という二人の編集者が草介の才能に向き合う姿は、そのことを静かに語りかけてきます。
そして、暁海が波を渡っていく姿は、愛だけが人生ではないこと、それでも人は美しく生きられることを示しているといえます。
前作を読んで余韻の中にいる方にとっては、その余韻に答えてくれる一冊でしょう。
前作をまだ読んでいない方には、前作から読み始めることで、本作の深さがより鮮明に伝わるはずです。
凪良ゆうさんが丁寧に編み上げた、星たちの物語——その続きを、ぜひ手に取って確かめてほしい作品といえます。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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