
廃墟を巡る少女たちの旅と哲学。静寂の終末世界で見つけた“生きる意味”
崩壊した文明の果てを、たった二人の少女がゆっくりと旅をする――。
『少女終末旅行』は、日常と非日常、希望と虚無が入り混じる“終末世界”を舞台に描かれる、静かで深い物語です。
原作はつくみずさんによる漫画作品で2014年から「くらげバンチ」にて連載。
全6巻で完結しており、2017年にはアニメ化もされました。
終末SFでありながら、肩肘張らない“ゆるやかな空気感”と“哲学的な問い”が多くの読者の心をつかんでいます。
静けさの中に宿る余韻――。
この作品は、“何も起こらないように見える”中で、読む者の心に確かな何かを残してくれる名作です。
あらすじ
文明が崩壊し、人々が姿を消した世界。
その無人の多層都市を、小型装甲車「ケッテンクラート」に乗って旅するのは、少女チトとユーリの二人。
日々、食料や燃料を探しながら、廃墟の街を移動し、時に機械を修理したり、見知らぬ残骸を眺めたり、滅びの痕跡に触れたり――。
大きな事件は起きません。
それでも、彼女たちの旅は少しずつ進んでいく。
終わってしまった世界で、「生きる」こととは何か。
過去の文明が残したものに触れながら、少女たちは自分たちの生きる意味を見つけようとします。
登場人物
チト
冷静で理知的な性格。読書が好きで、日記をつけている。
装甲車の操縦・整備を担当するなど現実的な行動力を持つ反面、不器用で慎重な一面も。
常に周囲を観察し、言葉や知識で世界を理解しようとする。
ユーリ
明るくて天然、楽観的でおおらかな性格。
銃の扱いに長け、体力もあるが、細かいことはあまり考えず、直感で動くタイプ。
食べ物に目がなく、空腹や眠気に正直。
チトとは対照的だが、だからこそバランスの取れたコンビ。
二人は正反対のようでありながら、互いを信頼し、補い合って旅を続けていきます。
見どころと魅力

1. 静けさと美しさが支配する終末世界
廃墟となった都市、無人の工場、静まり返った図書館、雪原、崩れかけた塔――。
そうした風景が丹念に描かれ、まるでアートブックのような読書体験を味わえます。
人がいない世界の“空白”が、かえって豊かな意味を持つのです。
2. 哲学的な問いと日常の会話
「死とは何か?」「文明の意味とは?」「人は何のために生きるのか?」
重たくなりがちなテーマを、チトとユーリが自然な会話として語り合うのが本作の魅力。
言葉は少なくても、その一言が読者の心を深く揺らします。
3. 二人の関係性が物語の軸
対照的な性格のチトとユーリが、お互いを信じ、支え合うことで生まれる「関係性の美しさ」。
大きなドラマはありませんが、日常の中の些細なやり取りが何より心に残ります。
4. 無常観と希望の同居
全体を包むのは“滅び”の空気。しかしその中にも、小さな希望、笑い、優しさが宿っています。
「終わりの世界」にも確かに“生”があると感じさせてくれる、その静かな力が感動を呼びます。
アニメ版について
2017年に全12話で放送されたアニメ版『少女終末旅行』は、原作の空気感を忠実に再現した名作です。
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制作:WHITE FOX
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主題歌:「動く、動く」(OP)、「More One Night」(ED)
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声の出演:チト役・水瀬いのり、ユーリ役・久保ユリカ
印象的な背景美術、BGM、そして静かな間の取り方が高評価を受け、漫画ファンからも絶賛されています。
原作を補完する意味でも、ぜひ視聴をおすすめしたい作品です。
こんな人におすすめ
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終末SF・ポストアポカリプスものが好きな人
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静かで哲学的な作品に惹かれる人
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アクションや事件より、空気感と関係性を味わいたい人
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深く考えさせられる“癒しと余韻”を求める人
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読み終えた後も、心に残る一冊を探している人
おわりに
『少女終末旅行』は、派手な展開こそないものの、世界の終わりを二人の少女が旅するというシンプルな設定が最後まで魅力的に描かれている漫画です。
廃墟の描写や、小さな発見を積み重ねていく日常の描写が丁寧で、一話ずつじっくり読み進めたくなる作品です。
物語の展開も短すぎず、長すぎず、全6巻で完結している点も手に取りやすいポイントです。
何か大きなテーマを構えていなくても、ただ“読む”ということを楽しめる漫画です。
迷っているなら、まずは1巻から手に取ってみてください。
おわり
ジャケドロ661



