
「正しさ」に縛られ、愛に翻弄され、それでも生きていく。
人生の選択と向き合う、切なくも美しい愛の物語。
凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』は、2023年本屋大賞を受賞し、累計発行部数100万部を突破したベストセラー作品です。
『流浪の月』で本屋大賞を受賞した凪良さんが、2度目の本屋大賞受賞作として世に送り出した本作は、第168回直木賞候補、キノベス!2023第1位、2022王様のブランチBOOK大賞など、数々の賞を受賞しています。
そして2025年7月、横浜流星さんと広瀬すずさん主演、藤井道人監督により映画化されることが決定し、ますます注目を集めています。
瀬戸内の美しい島を舞台に、15年にわたって描かれる二人の愛の物語。
「正しさ」とは何か、「幸せ」とは何か。
深く心に問いかける、感動の恋愛小説です。
- あらすじなど
- 「正しさ」と「幸福」への問いかけ
- 凪良ゆうさんの作家性が光る作品
- 作品の構成と読みどころ
- 読後に残る深い余韻
- こんな人に特に読んでほしい
- 注意点など
- おわりに:人生を自分で選ぶすべての人へ
あらすじなど
物語の主人公は、瀬戸内の美しい島で育った高校生・井上暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた青埜櫂(かい)です。
暁海の父親は不倫相手のもとへ出ていき、母は次第に精神を病んでいきます。
一方、櫂の母・ほのかは男なしでは生きられない性格で、息子の櫂を連れて恋人を追いかけ転々と暮らしてきました。
そんな重い家族の問題を抱えた二人は、お互いの境遇を理解し合い、惹かれ合っていきます。
恋人同士になった二人は、いつか一緒に島を出て東京で暮らそうと誓い合います。
しかし、母親の病状や生活のために島に残らざるを得なくなった暁海と、漫画家になる夢を追って東京へ出た櫂。
物理的な距離だけでなく、次第に心の距離も離れていきます。
それぞれが相手への深い愛を持ちながらも、家族の問題に引きずられ、すれ違っていく。
そして時は流れ、二人は17歳から32歳になるまでの15年間、別々の道を歩むことになります。
「わたしにとって、愛は優しい形をしていない」
「まともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない」
印象的な言葉とともに紡がれる、あまりにも切ない愛の物語です。
「正しさ」と「幸福」への問いかけ
世間の「正しさ」に縛られる生き方
本作の大きなテーマの一つが、「正しさ」とは何かという問いです。
島という閉鎖的なコミュニティで育った暁海は、周囲の目や「こうあるべき」という価値観に縛られ、自分の本当の気持ちを押し殺してきました。
母のために島に残る選択をし、望まない結婚をし、自分の人生を犠牲にしてきたのです。
一方、櫂もまた、自由奔放に見えて実は母への罪悪感や、暁海を置いて東京へ出たことへの後悔に苦しみ続けます。
夢を叶えて成功を収めても、心の底には常に暁海への想いがありました。
二人とも「正しい選択」をしようとするあまり、自分自身を見失っていたのです。
作中には「愛と呪いと祈りは似ている」という印象的なフレーズが登場します。
「どうか元気でいて、幸せでいて」と相手を想いながらも、同時に「わたし以外を愛さないで、わたしを忘れないで」という身勝手な思いが渦巻く。
愛する人への祈りは、同時に呪いにもなりうるという、人間の感情の複雑さが丁寧に描かれています。
自分の人生を取り戻す勇気
物語が進むにつれて、二人は少しずつ変化していきます。
「自分の人生は自分で選ぶ」という、当たり前のようで難しい選択をするために。
世間の「正しさ」ではなく、自分にとっての「幸せ」を選ぶために。
長い年月と、多くの痛みを経て、二人はようやく本当の意味で自分の人生を生きる覚悟を決めます。
それは決して綺麗事ではなく、何かを得れば何かを失う、そんな厳しい現実を伴う選択でした。
しかし、だからこそ読者の心に深く刺さるのです。
凪良ゆうさんの作家性が光る作品
2度の本屋大賞受賞作家
凪良ゆうさんは、1973年滋賀県大津市生まれ、京都府在住の小説家です。
2006年にBL作品でデビューし、「美しい彼」シリーズなど数多くの作品で人気を博してきました。
2017年に『神さまのビオトープ』で一般文芸に進出し、2019年に刊行した『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞。
同作は2022年に広瀬すずさん、横浜流星さん主演で映画化されました。
2020年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。
そして本作『汝、星のごとく』で、2023年に2度目となる本屋大賞を受賞しました。
凪良さんは過去のインタビューで、35歳で専業主婦から作家になり、その後離婚を経験したこと、作家としては遅咲きだったことを語っています。
「人生が順風満帆だったら小説は書けなかった」と語る凪良さん。
人生の苦しみや葛藤、失敗の全てが財産となって、読者の心に深く響く作品を生み出しているのです。
繊細な心理描写と言葉の力
凪良さんの作品の最大の魅力は、人間の心の奥底にある感情を丁寧にすくい上げる、繊細な心理描写です。
登場人物たちが抱える孤独、欠落、愛への渇望。
そして、社会の「正しさ」と自分の本当の気持ちとの間で揺れ動く葛藤。
こうした誰もが経験したことのあるような感情を、的確な言葉で表現する力に長けています。
また、作中に散りばめられた印象的なフレーズの数々は、読者の心に深く刻まれます。
美しくも残酷な現実を描きながら、それでも生きていく希望を感じさせる。
それが凪良作品の大きな魅力なのです。
作品の構成と読みどころ
瀬戸内の美しい風景
物語の舞台となるのは、瀬戸内海に浮かぶ美しい島です。
青い海と空、夏の夜空に咲く花火。
風光明媚な景色の描写が、物語に詩情を添えています。
作中に登場する愛媛県今治市の「おんまく祭り」の花火は、二人にとって特別な意味を持つシンボルとして描かれています。
2023年8月には、凪良さんの発案で「書店で花火を見上げよう」という企画が実施され、六本木蔦屋書店でプロジェクションマッピング花火のイベントが開催されました。
これは「書店に訪れる人を増やしたい。書店は本を買うだけではなく、様々な物語の出会いと喜びのある場所だということを伝えたい」という凪良さんの想いから実現したものです。
15年という時間の流れ
本作は17歳から32歳までの15年間という、長い時間軸で物語が展開します。
高校時代の純粋な恋、すれ違い、それぞれの人生の選択、そして再会。
時間の経過とともに変化していく二人の関係性が、丁寧に描かれています。
若さゆえの衝動的な言動や選択が、後になってどんな意味を持つのか。
時間が経ってようやく理解できることもある。
長い時間をかけて成長していく二人の姿に、多くの読者が自分自身を重ね合わせることでしょう。
脇を固める登場人物たち
暁海と櫂を支える高校教師・北原先生の存在も重要です。
二人の境遇を理解し、時に厳しく、時に優しく見守る北原先生自身にも、語られなかった過去があります。
また、櫂の漫画家としての成功を支えた編集者たちや、暁海の人生に関わる人々。
それぞれのキャラクターが丁寧に描かれ、物語に深みを与えています。
本作の続編として2023年11月に刊行された『星を編む』では、北原先生の過去や、櫂を支えた編集者たち、そして暁海のその後が描かれています。
本編で語りきれなかった愛の物語が紡がれる続編も、多くの読者から支持されています。
読後に残る深い余韻
ただの恋愛小説ではない
本作は恋愛小説という枠に収まりきらない、普遍的なテーマを持った作品です。
親子関係、ジェンダー、地方と都会、夢と現実、SNSでの炎上といった現代的な問題も織り込まれています。
そして何より、「自分の人生をどう生きるか」という、誰もが向き合わなければならない問いが描かれています。
読後、自分自身の人生について深く考えさせられる。
そんな読書体験をもたらしてくれる作品です。
涙なしでは読めない物語
本作を読んだ多くの読者が「涙が止まらなかった」と語っています。
暁海と櫂のすれ違いの切なさ、それぞれが抱える痛み、そして長い時間を経てようやく辿り着く結末。
感動的なシーンの数々に、心を揺さぶられずにはいられません。
ただし、その涙は悲しみだけではなく、人生の美しさや、生きることの意味を感じさせてくれる涙でもあります。
こんな人に特に読んでほしい

自分の人生に迷いを感じている人
「このままでいいのだろうか」と自分の選択に疑問を感じている方。
「正しい人生」という概念に縛られている方。
本作は、そんな方々の心に寄り添い、勇気を与えてくれる作品です。
切ない恋愛小説が好きな人
純粋な恋愛小説として読んでも、十分に満足できる作品です。
すれ違う二人の切なさ、長い時間をかけて育まれる愛の深さ。
心に響く恋愛小説を求めている方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
凪良ゆうファン
『流浪の月』に感動した方、「美しい彼」シリーズのファンの方。
凪良さんの作品を愛読してきた方にとって、本作は著者の集大成とも言える最高傑作です。
凪良作品ならではの繊細な心理描写と、心に刺さる言葉の数々を堪能できます。
人生の意味を考えたい人
哲学的なテーマに興味がある方、人生について深く考えたい方。
本作は小説という形を借りた、人生への深い洞察に満ちた作品です。
注意点など
重く切ないテーマ
親の問題に翻弄される子どもたち、すれ違う恋人たち、人生の選択の難しさ。
扱われているテーマは決して軽くありません。
心が疲れている時期には、読むタイミングを選んだ方が良いかもしれません。
感情移入して辛くなる可能性
登場人物たちの痛みや葛藤があまりにもリアルで、感情移入するあまり辛くなる場面もあります。
特に親子関係に問題を抱えた経験のある方は、自分の過去を思い出して辛くなる可能性があります。
涙腺崩壊必至
多くの読者が「涙が止まらなかった」と語っているように、感動的なシーンが随所にあります。
電車の中など、人前で読む際はご注意ください。
おわりに:人生を自分で選ぶすべての人へ
『汝、星のごとく』は、『流浪の月』で本屋大賞を受賞し、多くの読者の心を掴んできた凪良ゆうさんの、最高傑作との呼び声も高い作品です。
2022年8月に単行本が刊行され、2023年本屋大賞を受賞。
第168回直木賞候補、キノベス!2023第1位など、数々の賞を受賞し、シリーズ累計発行部数は100万部を突破しました。
そして2025年7月15日には待望の文庫化が実現し、さらに多くの読者の手に届くことになりました。
また、横浜流星さんと広瀬すずさん主演、藤井道人監督により映画化が決定。
2026年公開予定の映画にも大きな期待が寄せられています。
瀬戸内の美しい島を舞台に描かれる、15年にわたる切ない恋の物語。
「正しさ」とは何か、「幸福」とは何か、「自分の人生を生きる」とはどういうことか。
深く心に問いかけるこの作品は、読後長く心に残り、自分自身の人生を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
「まともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない」
作中の印象的な言葉が示すように、誰もが完璧ではなく、迷いながら生きています。
それでも、自分の選択を信じて前に進んでいく勇気を。
この物語は、そんな勇気をくれる一冊です。
同じ空の下で星を見上げながら、それぞれの人生を歩んでいくすべての人に。
凪良ゆうさんが紡ぐ、美しく切ない愛の物語を、ぜひ手に取ってみてください。
この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。
おわり
ジャケドロ661
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