知られざる「死の現場」で見つけた、命の尊厳と人の温かさ
人の「最期」に立ち会う仕事、火葬場職員。
普段はなかなか知ることのないその世界を、驚くほどリアルに、そして温かく描いたコミックエッセイが『最期の火を灯す者 ~火葬場で働く僕の日常~』です。
YouTubeチャンネル「火葬場奇談」で注目を集めた下駄華緒さんによる原案を、蓮古田二郎さんが漫画化。
読むうちに「火葬場」という言葉に抱いていた漠然としたイメージが変わり、命の重みと、それを送り出す人々の想いがしっかりと胸に残ります。
最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常 (バンブーコミックス エッセイセレクション) Kindle版
あらすじ
主人公・下駄華緒は、火葬場職員として働くことを選んだ青年。
そこは日々、亡くなった人を見送る「最後の場所」。
火葬炉の前での儀式、炎に包まれるご遺体、破裂音や骨片の飛散――
決して綺麗ごとでは済まされない過酷な現場の中で、彼は同僚たちと共に、確かな使命と誇りを持って働いていく。
個性豊かな職員たちに囲まれながら、火葬という仕事の意味と、自らの存在意義を見つめ直していく、静かな成長の物語です。
登場人物
下駄華緒(主人公)
真面目で実直な新人火葬場職員。時に葛藤しながらも、ひとつひとつの現場と向き合っていく。
尾知さん
厳しくも頼れる先輩。火葬の基本から叩き込む職人気質の教育係。
浦田さん
過去に母親の火葬失敗を経験し、その悔しさをバネに腕を磨いたスペシャリスト。
鬼瓦さん
ギャル風の容姿だが、的確な判断力を持つ頼れる後輩職員。
見どころ
火葬場のリアルな現場描写
遺体が動く、破裂する、骨片で職員が怪我をする。
現場でしか知り得ないリアルな描写に衝撃を受けつつも、命と向き合うという仕事の尊さが伝わってきます。
職員としての成長と葛藤
初めて任された火葬での失敗、遺族への対応に迷う場面など、人として、職員として、悩みながらも成長していく姿が描かれています。
読みやすく構成されたコミックエッセイ
ホラー的な要素やグロテスクな描写もありながら、絵柄は柔らかくテンポよい展開で進むため、重たくなりすぎず読み進めやすいのも特徴です。
巻ごとの内容紹介
第1巻(全14話+あとがき)
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火葬場職員として初出勤した下駄が体験する、初めての火葬。
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遺体が動く、破裂する、水死体が膨張するなど、火葬炉で起こる“本当の出来事”。
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現場の声がリアルに伝わってくる衝撃のスタート。
第2巻
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本格的に業務に慣れていく下駄。
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「煙仏の火葬」「謎のはさみ」「ネズミの侵入」など、想像を超えたトラブルの数々。
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ご遺族との温かなやり取り、職員としての判断力が試される場面も増えていく。
第3巻
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より重いテーマに踏み込む構成。
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死刑囚の火葬、水死体、死産児など、心を揺さぶる火葬案件が続く。
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終盤では「おばあちゃんの願い」に答えるエピソードが読者の涙を誘います。
第4巻
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過去に遡り、下駄がなぜ火葬場職員になったのかが描かれる。
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「納体袋」「腐敗臭」「片足だけの遺体」「震災の火葬」など、極限の現場に立ち向かう日々。
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「僕が火葬場職員になった理由」前後編でシリーズの核心に迫る。
以下のような作品を読む人におすすめ
『最期の火を灯す者』は、以下のような作品やテーマが好きな方に特におすすめです。
人の“最期”と真摯に向き合う物語が好きな方
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死役所(あずみきし)
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僕だけがいない街(三部けい)
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神様のカルテ(夏川草介)
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コウノドリ(鈴ノ木ユウ)
職業コミック・ノンフィクションが好きな方
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お別れホスピタル(沖田×華)
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看取りのお医者さん(かたおかみさお)
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マンガでわかる特殊清掃(中島竜也)
ヒューマンドラマ・成長物語が好きな方
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島守の塔
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ひよっこ社労士のヒナコ
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ランチのアッコちゃん
おわりに
『最期の火を灯す者』は、死という重いテーマに真正面から向き合いながらも、その奥にある「人を送ることの意味」を静かに教えてくれる作品です。
読めば読むほど、火葬場という場所がただの「終わり」ではなく、人生の最終章を彩る舞台であることに気づかされます。
各巻ごとに描かれるケースの多様性と主人公の成長を通じて、火葬場という「知られざる現場」を深く理解できます。
読み終えた後には、普段目を背けてしまいがちな“死”が、自分と他者の人生を見直すきっかけになるかもしれません。
興味のある方はぜひ、全4巻を通じてご一読ください。
最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常 (バンブーコミックス エッセイセレクション) Kindle版
おわり
ジャケドロ661