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逸木裕さんの『彼女が探偵でなければ』をご紹介!あらすじなど

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「こうなることを知っていたら、わたしは探偵をやめていただろうか」

真実を追い求めることは、果たして正しいことなのか。

人の本性を暴くことに執着してきた探偵が、自らの人生と向き合う物語。

逸木裕さんの『彼女が探偵でなければ』は、2024年9月28日に刊行され、第25回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞、さらにリアルサウンド認定2024年度国内ミステリーベスト10で第1位を獲得した、精緻でビターな連作ミステリです。

人の仮面を剥ぎ、その奥にある本性を見ることに取り憑かれた私立探偵・森田みどりが主人公の、全5編からなる短編集です。

彼女が探偵でなければ (角川書店単行本)

 

あらすじなど

彼女が探偵でなければ (角川書店単行本)

物語の主人公は、私立探偵の森田みどり。

高校時代に探偵の真似事をして以来、人の本性を暴くことに執着して生きてきた彼女は、気づけば二児の母となり、父親が経営する探偵事務所では女性探偵課の課長として部下を育てる立場になっていました。

本作は、2022年の夏から2024年の夏までを描いた5つの物語で構成されています。

時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。

様々な少年たちをめぐる謎にのめり込むうちに、彼女は真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていくことになります。

「人がつけている仮面を暴き、その奥にあるものをほじくり出す仕事」である探偵業。

みどりは職場では二十代の頃の無茶も辞さない調査を恋しく思いながら中間管理職をこなし、一方で家庭ではよき夫とともに息子二人を育てる、壮年の域に入った女性探偵の物語です。

謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。

痛切で美しい全5編が、読者の心を深く揺さぶります。

シリーズとしての位置づけ

デビュー作から続く探偵みどりの物語

探偵・森田みどりという人物は、逸木裕さんのデビュー作『虹を待つ彼女』(2016年、第36回横溝正史ミステリ大賞受賞)で脇役として初登場しました。

その後、短編集『五つの季節に探偵は』(角川文庫)で主人公へと成長し、高校時代から始まり、父親が経営する探偵事務所に就職、そして結婚、出産、育休を経て女性探偵課課長になるまでの長いスパンが描かれました。

この前作には、第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した「スケーターズ・ワルツ」が収録されています。

本作の独立性

『彼女が探偵でなければ』は、『五つの季節に探偵は』の続編という位置づけですが、作中時間がさらに4年進み、2022年から2024年までのエピソードが並びます。

前作を読んでいなくても、この一冊だけで十分に楽しめるよう配慮されているため、初めての方でも安心して手に取ることができます。

もちろん、シリーズを通して読むことで、みどりという人物の成長と変化をより深く味わうことができるでしょう。

逸木裕さんについて

逸木裕さんは、1980年東京都生まれ。

学習院大学法学部法学科を卒業後、フリーランスのウェブエンジニア業の傍ら、小説を執筆されています。

2016年に『虹を待つ彼女』で第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビュー。

2022年には「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞されました。

そして本作『彼女が探偵でなければ』では、リアルサウンド認定2024年度国内ミステリーベスト10で第1位を獲得し、第25回本格ミステリ大賞を受賞。

デビュー作の横溝正史ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、そして本格ミステリ大賞と、主要なミステリ賞を受賞した「三冠シリーズ」となりました。

その他の著書に、『少女は夜を綴らない』『星空の16進数』『銀色の国』『空想クラブ』『四重奏』『世界の終わりのためのミステリ』など多数。

音楽の謎を扱った作品、人類が消失した終末世界を舞台にした作品、VRゲームを扱った作品など、さまざまな題材から精緻で美しいミステリを生み出し続けている作家です。

作品の構成と読みどころ

「少年」をめぐる5つの物語

粒ぞろいの収録作には、いずれも「少年」が重要な役柄で登場します。

第1話「時の子」では、腕の立つ時計師だった父親を亡くして間もない時計店の息子。

第2話「縞馬のコード」では、自らを「千里眼の持ち主」と称し、失踪した人物の行方を当ててみせた、背が高く謎めいた学生。

第3話「陸橋の向こう側」では、ひともほとんどいない夜の商業施設で出会う少年。

各エピソードで登場する少年たちをめぐる謎を通して、みどりは自らの探偵としての生き方を問い直していきます。

日常系ミステリの深み

本作は、いわゆる血の流れない日常系ミステリーに分類されるでしょう。

派手な殺人事件や劇的な展開はありませんが、日常の中に潜む小さな謎、人の心の奥に隠された真実を丁寧に掘り下げていきます。

ミステリーとしては地味に見えるかもしれませんが、丁寧に紡がれた物語は非常に味わい深く、二転三転する展開にミステリーの醍醐味を存分に味わえます。

探偵という存在への問いかけ

「心に虎を抱えている」と評されるみどりは、謎にのめり込み真実を追う姿勢を変えることができません。

中間管理職となって現場から少し離れた立場になっても、家庭を持ち子供を育てる母親になっても、彼女の本質は変わりません。

ときに部下の視点、他者の視点から描かれる作品もあり、探偵という職業の本質、真実を暴くことの意味が多角的に描かれています。

本作のタイトル「彼女が探偵でなければ」という問いかけは、読者に深い余韻を残します。

もし彼女が探偵でなければ、いったい何が起こり得て、あるいは起こり得なかったのか。

真実を追い求めることの功罪を、読者自身も考えずにはいられません。

読み終わった後の問いかけ

真実を知ることの意味

本作を読むと、真実を知ることが本当に正しいのかを考えさせられます。

真実を暴くことで傷つく人がいる。

知らないままの方が幸せだったこともある。

それでも真実を追い求めるべきなのか。

探偵という職業を通して、人間の根源的な問いが投げかけられます。

探偵と人間性のバランス

みどりは探偵としての執着と、母親や管理職としての責任の間で揺れ動きます。

かつて「向こう側」に行ってしまいそうな危うさを感じさせた彼女が、家庭や部下といった「こちら側」に踏みとどまっていられるのは、彼女の成長なのか、それとも妥協なのか。

本作の中のエピソードでも、まかり間違えば命を落としていたかもしれない状況に陥ることがあります。

知りたい、暴きたいという欲求が原点になっているみどりの生き方は、読者に強い印象を残します。

こんな人に特に読んでほしい

ミステリファン

精緻な謎解きと美しい文章が魅力の本格ミステリです。

派手な展開よりも、丁寧に構築された謎と伏線回収を楽しみたい方に最適です。

探偵小説が好きな人

探偵という職業の本質、真実を追い求めることの意味を深く考えさせられる作品です。

単なる謎解きを超えた、探偵小説の新しい可能性を感じられるでしょう。

日常系ミステリが好きな人

血なまぐさい事件ではなく、日常に潜む小さな謎、人の心の機微を丁寧に描いた作品を好む方には特におすすめです。

逸木裕ファン、シリーズファン

『虹を待つ彼女』や『五つの季節に探偵は』を読んだ方には、みどりという魅力的な探偵の新たな物語を楽しめる一冊です。

もちろん、本作から読み始めても問題ありません。

深い読後感を求める人

読んだ後に、じっくりと作品について考えたい、余韻に浸りたいという方に向いています。

一度読み終わっても、何度も読み返したくなる作品です。

注意点など

前作との関連性

本作は『五つの季節に探偵は』の続編ですが、単独でも楽しめます。

ただし、シリーズを通して読むことで、みどりというキャラクターの成長や変化をより深く理解できます。

前作から読むことをおすすめしますが、本作から読み始めても特に問題はありません。

地味に感じる可能性

派手な展開や劇的な事件を期待する方には、物足りなく感じるかもしれません。

日常に潜む小さな謎、人の心の機微を丁寧に描いた作品なので、そうした静かなミステリを好む方に向いています。

明確な答えは示されない

多くのミステリがそうであるように、本作でも明確な「正解」は示されません。

真実を追い求めることが正しいのか、探偵という生き方をどう評価するのか。

読者それぞれが自分なりの答えを探す必要があります。

感情を揺さぶられる

特にラストの「探偵の子」では、深く心を揺さぶられる展開が待っています。

静かな物語ではありますが、感情的になる可能性があるため、心の準備が必要かもしれません。

おわりに:真実と向き合うすべての人へ

『彼女が探偵でなければ』は、第36回横溝正史ミステリ大賞でデビューした逸木裕さんが、探偵・森田みどりというキャラクターを通して、真実を追い求めることの意味を問いかける作品です。

本作は、第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した「スケーターズ・ワルツ」を含む『五つの季節に探偵は』に続くシリーズ第2弾として、2024年9月28日に刊行されました。

そして刊行後まもなく、リアルサウンド認定2024年度国内ミステリーベスト10で第1位を獲得し、第25回本格ミステリ大賞を受賞。

横溝正史ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞という主要三賞を制覇した「三冠シリーズ」となりました。

人の本性を暴くことに執着してきた探偵が、自らの人生を振り返ったとき、何を思うのか。

真実を追い求めることは正しいのか。

探偵でなければ、何が変わっていたのか。

精緻に構築された謎解き、丁寧に紡がれた物語、そして深い余韻。

読者それぞれが、本作を通して「真実」と「探偵」という存在について考えを巡らせることになるでしょう。

ミステリファンはもちろん、人生や職業について深く考えたいすべての人に読んでほしい、価値ある一冊です。

彼女が探偵でなければ (角川書店単行本)

 

この記事があなたの読書選びの参考になれば幸いです。

 

おわり

 

ジャケドロ661

 

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