※本記事には作品のあらすじの紹介と、多少のネタバレを含みます。
伊坂幸太郎さんが描く、優しさと切なさが交差する異色作『バイバイ、ブラックバード』。
本作は、伊坂作品にしては珍しい恋愛要素が強く、しかしその裏にある深いテーマと、人間の温かさを感じられる傑作です。
読み終えた後は、しばらく考えさせるほどの、余韻が残る一冊です。
バイバイ、ブラックバード<新装版> (双葉文庫) Kindle版
目次
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あらすじと見どころ
物語の主人公は星野一彦。
彼には「5人の婚約者」がいます。
もちろん一夫多妻制というわけではなく、いわゆる“二股”どころではない五股男。
とはいえ、彼は単なる浮気男ではなく、どの相手にも本気で、真剣に向き合ってきた過去があります。
そんな彼が突如、ある事情により「この世界から消える」ことになります。
そして、その前に5人の婚約者に別れを告げに行く、というのが本作の軸です。
彼に付き添うのは、“繭美”という謎の女性。
大柄で無表情、口が悪く容赦もない彼女ですが、物語が進むにつれてその存在がどんどん愛おしくなっていきます。
星野と繭美、そして5人の女性たちとの対話や回想を通じて、星野の人生が浮かび上がり、読者は彼の「罪」と「優しさ」の間で揺れることになります。
『バイバイ、ブラックバード』のおすすめポイント
まず注目したいのは、登場人物たちの深い人間描写です。
星野は浮気者として非難されるべき人物なのに、読んでいくうちにどこか憎めず、むしろ応援したくなってしまう。
なぜ彼は5人もの女性と関係を持ったのか、その理由に触れたとき、読者の中にある先入観が静かに覆される感覚を味わうでしょう。
そして、繭美というキャラクターの存在。
彼女は星野の「見張り役」として登場しますが、やがて星野との奇妙な友情が芽生えていく様子が心に沁みます。
ときに厳しく、ときに寄り添う彼女の言動には、痛烈で的確な人生の真理が詰まっています。
また、5人の女性たち一人ひとりの描写も丁寧で、それぞれがしっかりと存在感を持っています。
星野がどんな風に彼女たちと向き合い、どんな別れを選ぶのか。
そのたびに見せる星野の心の揺れが読者の胸を打ちます。
伏線や構成の妙といった伊坂作品らしさは控えめながらも、会話のテンポや言葉のセンスには確かな“伊坂節”が光ります。
そして、全体を通して流れるのは「別れ」と「贖罪」、そして「人の優しさ」
切ないのに、どこか希望を感じられる、そんな読後感が本作の最大の魅力です。
映像化作品にも注目
本作は2018年にドラマ化もされ、星野役を演じたのは高良健吾さん、繭美役には城田優さん(原作では女性だが映像化にあたって男性に設定変更)というキャスティングも話題となりました。
原作とはまた異なる味わいで、こちらもぜひチェックしてみてください。
個人的には
読んでいる最中は、繭美はマツコ・デラックスさんで脳内再生されていました。
こんな人におすすめ
・切なさと温かさのある物語を求めている人
・不器用だけど優しい人間に共感したい人
・恋愛ものは好きだけど、ちょっと変化球が欲しい人
・「別れ」をテーマにした作品に惹かれる人
・伊坂幸太郎さんの人間ドラマに触れてみたい人
『バイバイ、ブラックバード』は、恋愛小説のようでありながら人生そのものを描いた物語。
星野という不思議な男と、彼を取り巻く人々の姿を通じて、私たちは“人を大切に思うこと”の意味を改めて考えさせられます。
読了した後、きっと何かが心の中に残るはずです。
ぜひ、この美しくてちょっと不思議な物語を手に取ってみてください。
伊坂幸太郎さんの中でも、何作か伊坂作品を読んだ後にこの作品を読んでもらえると
新しい伊坂さんに出会えますよ!
しかし星野という人間の魅力は凄いです。
バイバイ、ブラックバード<新装版> (双葉文庫) Kindle版
おわり
ジャケドロ661
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